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大田に盗撮を見破られた恵一はその後ろくにリナを撮影することもできず、放課後が来ていた。


授業内容は右から左へと抜けていき、ほとんど聞いていなかった。


カバンを肩にかけ、誰にも挨拶することなく一人でB組の教室を出る。


みんなが階段を下りていく中、恵一は一人で階段を上がっていく。


あの女子生徒が言っていたように屋上の鍵は閉められて出ることはできないだろう。


それでも確かめてみたかった。


もしも本当にそんな仮面があるとすればとても面白そうだし、話のネタにもなる。


そこまで考えてふと足を止めてしまいそうになった。


話のネタなんて持っていても自分には友人と呼べる人がいない。


誰にも話すことのないネタを持つ必要がどこにある?


悲観的な自分が心の中に顔を覗かせて、そんな風に質問をしてくるのだ。


恵一は再び階段を上がりながら、別にいいじゃないかと割り切ることにした。


会話する相手は友人だけじゃない。


両親も、病院の先生もいる。


特に病院の先生は診察のたびに学校生活について質問をしてくる。


大半は体に影響が出ていないか気にしてのことだったが、昔からお世話になっているため恵一の友人関係についても気にしている様子なのだ。