早く家に帰りたかった。


家に帰って、この血まみれになった体を洗いたい。


アパートでなくてもいい。


あのクソみたいな叔父と叔母がいる家でもいい。


気持ち悪いイジメっ子の多い学校でもいい。


少なくても、今の状況よりはそっちのほうが幸せだと思えるようになっていた。


帰りたい。


帰りたい。


帰りたい。


だけど光平の耳は人の足音を聞き逃さなかった。


光平の意思に関係なくそちらへ振り向く。


外灯の下、懐中電灯を持って歩いているひとりの女性がいた。


とても小柄でネガメをかけて、年齢は光平と同じくらいに見える。