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「ねぇ、仮面の噂って知ってる?」


2年B組の教室内で、女子生徒たちが数人固まって噂話に花を咲かせている。


「知ってるよ。前に聞いたじゃん」


「だよね。ひとりで屋上に行ったら仮面があるっていうやつでしょう?」


「その噂ね、続きがあるんだよ」


「続き?」


「そう。仮面を手に入れた人が注意しなきゃいけないこと」


「なにそれ?」


「仮面を長時間顔につけていると、顔と仮面がひとつになっちゃうんだって。だからね、永遠に同じ犯罪を繰り返すようになるっていう噂」


「でも、仮面をつけたままだったらすぐに犯罪者だってわかるんじゃない?」


「それがこの噂の怖いところでさ、顔と仮面が完全にひとつになったら、もう元の顔に戻るんだって。だから、見た目では普通の人なのか、仮面をつけた人なのか、わからなくなるらしいよ」


「なにそれ、そんなの卑怯だよ~」


「もしかしてこのクラスにも犯罪者がいるかもってこと!?」


「まぁ、噂は噂だからねぇ」


夏の昼下がり、女子生徒たちの楽しそうな声はいつまで聞こえてきていた。