その光景を見ていた光平は唖然として、慌ててアパートへと賭け戻った。


誰かがあの仮面を盗んで屋上に戻したのではないかと考えたのだ。


だけどその心配は不要だった。


光平が持って帰った仮面はしっかりとクローゼットの中に保管されていた。


それを確認して思い当たることはひとつだけ。


あの仮面は必要な人の前にだけ現れる。


ひとりだけじゃなく、必要としている全員の前に現れるのだ。


それから光平は毎日屋上へ行き、誰が仮面を拾うのかを確認した。


仮面を拾った相手の後をつけて、どのような犯罪を犯すのかも見てきたため、自分が使わずともあの仮面の力が本物であることはわかっていた。


そして、クルミが自分の家を放火したあの日、光平は始めて自分の仮面を身に着けたのだ。


自分がどんな犯罪者になるのか、内心光平はワクワクしていた。


今まで動物を殺してきて、今度はもっと大きな動物を殺したいと願っている。


その願いを、この仮面がかなえてくれると信じていたからだ。


仮面をつけた光平は自分の手足が勝手に動き、クルミの家へと向かうのを感じた。


クルミが自宅に火をつけて裏路地に身を潜めているのを確認すると、あらかじめ準備していたスタンガンを握り締めて近づいた。


最初の獲物はこいつだ。


光平は電力を最大に上げたスタンガンを、クルミの体に押し当てたのだった。