呟き、手を伸ばす。


噂で聞いていたあの仮面か?


それにしては軽いし、珍しくもなんともない仮面に見える。


噂のように不思議な仮面ならもっと重厚感のあるものだろうと勝手に想像していたのだ。


ツルリとした仮面の表面を指先でなでると、光平はそのまま持ち帰ってしまったのだった。


それからの数日間は少しだけ刺激的なものとなった。


あの噂は相変わらず学校内でささやかれているようで、自分以外にも誰か仮面を求めて屋上へやってくるのではないかと思った光平は、放課後近くになると屋上に向かうようになった。


貯水槽の影に隠れていると、最初に来たのは恵一だった。


同じクラスなので顔くらいは覚えている。


でも残念。


仮面は俺がもらったんだ。


心の中でそう思った光平だったが、気がつけば屋上にあの仮面が落ちていたのだ。


恵一はとまどいながらもそれを手にすると持ち帰ってしまった。