そんことを考え始めたときのことだった。


学校の廊下で話したこともない女性生徒たちが噂話に花を咲かせているのが偶然耳に入った。


「1人で放課後の屋上にいくと、仮面が落ちているんだって」


その仮面はプロ級の犯罪師になれるというものだった。


光平は女子生徒の後ろを通りすぎながらその話を聞き、そのまま保健室へとむかった。


「あら、いらっしゃい」


40代後半の保険医の先生が笑顔で出迎えてくれる。


「どうも」


光平はぶっきらぼうに返事をして、ベッドに直行した。


自分の教室である2年B組にいくつもりはなかった。


こうして保健室で眠っているだけで保険医の先生はちゃんと出席扱いにしてくれる。


時にやる気がある時には保険医の先生に勉強を教えてもらうこともあった。


この人がいなければ、きっと光平は高校に来ることもなかっただろう。


光平は大きな欠伸をひとつして、目を閉じたのだった。