三毛猫とは珍しいな。


最初はそんな気持ちで野良猫を見ていた。


野良猫は足を上げてペロペロと自分の腹をなめ始める。


その様子を見ていると次第にその姿が叔父と重なってきた。


大きな腹にふてぶてしい態度。


少し木に触ることがあればすぐに手を上げて、言いなりにする。


ふつふつと怒りがこみ上げてくる。


握り締めた拳は爪が食い込んでいるが、少しも痛みは感じなかった。


気がつけば光平は野良猫に近づいていた。


怖がらせないように身を低くして、笑顔で「よしよし」と話しかける。


野良猫は近づいてくる光平に一瞬逃げ出そうとしたが、光平がその体を握り閉めたほうが先立った。


野良猫は光平の腕の中で暴れる。


光平はニヤリと笑い、その細い首に手をかけた。


片手で簡単に持てる程度の華奢な首。


野良猫はギャーギャー!と、まるで人間の子供のような鳴き声を張り上げた。


だから光平は首を掴んだ手に力をこめた。


それで野良猫は静かになった。


とても簡単なことで、光平の心はスッと晴れていったのだった。