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恵一がアイドルに憧れるようになったのは高校に入学してからだった。


生まれつきに体が弱かった恵一は入退退院を繰り返していて、小学校に入学してからもなかなか学校になじむことができずにいた。


特に中学時代は最悪で、たまにしか学校に来ない恵一のことを攻撃してくる生徒は多かった。


どうせ仮病でサボっているだとか、1人だけ学校で特別扱いをされているだとかいう噂は日常茶飯事。


体育の授業はすべて休んでいたから、それに対しても非難の目は耐えなかった。


それでも高校に入学すればみんなも少しは大人になる。


事情を理解してくれるだろうし、恵一の体調も随分とよくなっていた。


体育などは参加できないが、他の授業はみんなと一緒に参加することができる。


中学生活が灰色だった恵一は特に高校生活に期待を抱いていた。


ちゃんと学校へ行くことができれば友達だってすぐにできる。


今までの自分とは違うんだから大丈夫だと。


でも、現実はそこまで甘くはなかった。


中学までとは違い、確かにこちらの事情を理解してくれる生徒は増えた。


しかし、だからと言って友人になれるかどうかは別問題なのだ。


今まで病院の中で大人たちに囲まれてきた恵一は、友人の作り方もよくわからないままだった。