仮面夫婦の子作り事情~一途な御曹司は溢れる激愛を隠さない~

よかった。空気が元に戻った。
表面上だけな気もするけれど、私のことでふたりが険悪になられては困る。
私たちは食事をして、食後に紅茶とシュークリームを楽しんだ。

「じゃあ、兄さん明日会社で」
「うん、悪いな。来てもらっちゃって」
「昼過ぎには行きます」

優雅さんは最後まで笑顔だった。その背中を見送り、私はなんとも言えない気持ちだった。
ぞわぞわするような嫌な心地はずっと消えていない。それが優雅さんに言われた言葉のせいなのか、私自身のせいなのかわからない。

「希帆」

不意に風雅が後ろから抱き締めてくる。

「気にしなくていいからね、優雅の言ったこと」
「気にしてないけど」
「希帆がゆっくりでも俺の方を見ようとしてくれてるだけで満足。だって、この十年ちょっとで俺たち一番進展してるもん」

結婚から逃げるために、十年私は海外にいた。風雅のお父様の件がなければ、もっと離れていただろう。

「風雅、十年間、私に会いたいと思ってた?」
「そりゃ会いたかったよ。年に一度は会えても、別れるときはいつもさみしいなって思ってた。何度か台湾まで会いに行こうって飛行機取るところまでしたよ。でも、希帆見たらさらって帰りそうで。ほら、希帆ってスーツケースに入るサイズじゃん? 小脇に抱えて、スーツケースにインで日本に連れ帰れちゃうし」

茶化したいのかそんなことを言う風雅。
私は腕を伸ばし風雅の髪を撫でた。後ろから抱き締められているから表情は見えない。