仮面夫婦の子作り事情~一途な御曹司は溢れる激愛を隠さない~

ドキリとした。優雅さんは私ににっこりと微笑む。表情に温度があるならかなり冷たいと思う。

「希帆さんは兄のこと、好きではないんだなと。いえ、婚約当初から兄ばかりがのぼせ上がっているようには見えていたので」
「ちょっと優雅、意地悪なこと言うのやめろよー。俺と希帆は仲良しだって」

風雅が唇を尖らせ口を挟んでくる。

「まあ、確かに少しずつ進展中なんだよねー、希帆?」

話を振られてなんと答えたものか迷った。しかし、頷く以外できず、言い訳みたいな言葉を追加してしまう。

「クラスメイトがスタートで、婚約しても長年その距離だったので。まだ夫婦らしくなれなくて」
「でも、クラスメイトの距離を望んで海外に行ったのは希帆さんですよね」

言葉の棘。……今の言葉には確実にあった。そして、私はそれを否定しきれない。

「希帆が留学するのも向こうで仕事するのも、俺たちちゃんと話し合った上で決めたんだよ。優雅は嫌味を言わないように」

め、と子どもにするみたいに優雅さんに注意する風雅。それはあきらかに私を庇った言葉だ。
だって、私はろくに相談もしないで進路を決めた。風雅から逃げたい一心で。風雅もまたさほど私のことを気にはしないだろうと思い込んで。

すると、優雅さんがにっこり微笑んだ。
すごく人の好い笑顔だけど、なんとなく真意をつかみづらい。

「すみません、希帆さん。僕、弟馬鹿なのかもしれないですね。高校時代からあなたを追いかけて、相手にされない兄が不憫になってしまい、つい失礼なことを」
「あ、いいえ」
「『相手にされない』は余計なんだけど。希帆はちゃんと俺のこと構ってくれるよ」
「構わないと兄さんがうるさいからでしょう?」

そう言ってふたりは楽しそうに笑う。