仕方なく今日も風雅とともにベッドに入る。
きゅうきゅう後ろから抱き締め、鼻っ面を擦りつけてくる大男の腕の中、私は眠りのおとずれを待つ。こんな日々にも慣れてしまった。

風雅は週に二・三度は私が起きている時間に帰ってくるようになった。
私が作った夕食を食べ、ふたりで時間を過ごし、一緒に眠る。休日も土日のどちらかは休みにしようと工面しているようで、私たちはお父様のお見舞いに行ったり、買い物をしたりとごく普通の家族の生活をしている。

性的な接触は一切ない。数えるほどだけど、キスはしたことがある。でもそれだけ。

私は風雅に友情以上の感情は持てないと伝えてあるし、風雅はそれに理解を示してくれている。セックスはまだ先でいい。私の心が動いてからでいい、と子作り禁止令に従ってくれている。

だけど、こうして毎日一緒に眠る中で、私も多少の申し訳なさを感じるようになっているのだ。
一途な愛情は感じるし、疑ってはいない。風雅の気持ちを汲んで、男性としての欲求を発散させてあげた方がいいんじゃなかろうか。
彼は男性なのだ。いつまでも高校時代の関係を引きずったまま、友達夫婦でいられるわけじゃない。
なにより、そんな労わりに気持ちを感じるのは、風雅の立場もあってのことだ。大企業の頂点に立つ風雅には、日常に癒しが必要なのではなかろうか。それが私になるなら……。

「希帆、眠れないの?」

風雅が私に話しかけてくる。