風雅ははにかんだように微笑み、私の両親をまっすぐに見つめた。

「ありがとうございます。大丈夫、希帆さんは僕が高校時代に見初めた女性です。芯が強くて、生命力にあふれてる。お義父さんとお義母さんのいいところをたくさん受け継いでいるんだなと感じます。そんな彼女となら、僕は重責に耐えていけると思います」

両親の背後に「じーん」という効果音が見えそうだ。風雅の好青年ぶりに胸を打たれる姿は、なんて単純なんだろうとため息もの。私ひとりが苦虫を噛み潰したような顔をしている。
母がキッと私を見た。

「希帆! あなた、本当に一ヶ月しか日本にいないつもり?」
「あー、うん。仕事が……」

実は嘘だ。私は台湾の住宅建設会社と契約しているインテリアと家具のデザイナー。フリーランスなので、その気になれば日本を中心に仕事もできる。
向こうにいた方が、職人とも会社の営業たちとも打ち合わせなどをしやすいからいるだけ。大学も台湾だったため、住み慣れているし。

「近いうちに、お仕事の目途をつけて日本で生活できるようにするんですよ!」
「そうだぞ、そもそもおまえが台湾で仕事を始めるから、風雅くんは何年もおまえとの結婚を待ってくれたんだ。左門社長のご体調だって……」
「わ、わかった。わかったから、お父さん、お母さん」

私は慌てて両親をなだめ、風雅の横でひくつく頬を無理やり笑顔に変えて頭を下げた。