「まあ、このくらい許してよ」
私の腰を抱いて、風雅は穏やかに微笑んでいる。本当に私といるときはいつも笑顔。機嫌の悪いところなんて何度かしか見たことないかも。
そう今朝方、夢に見たあのときくらい。私が同級生に階段から突き落とされたとき……。
「希帆、俺の顔じっと見てどうしたの?」
風雅が見下ろして言うので、私は自分が風雅の顔を凝視していたことに気づいた。
「ねえ、風雅。私に対してそんなににこにこしなくていいよ」
「希帆といると楽しいから、これが普通なんだけど」
「そう? 私は風雅のそういう腹の見えないところが結構嫌」
「ええ、厳しいなあ」
「だいたい、私のこと、本当に好きなの?」
電車が目的地の有楽町に到着する。風雅の腕を外し、先に降り立つ私。風雅が追いかけてきて、再び腰を抱いた。
「ちょっと、触んないで」
「さっきの話の続き。……好きだけど、そうは見えない?」
「見えない。親のために愛のない政略結婚だったって言われた方が自然。もしくは、手っ取り早く後継者を産んでくれそうな女がおまえだったって」
「ひどい思考だな~。俺ってそういうこと言うヤツに見える?」
「意味がわからないの。私と風雅の間に恋愛感情はなかったし、これからも生まれないと思う」
風雅の予約していたレストランは目の前だ。私たちは一度会話を止め、店内に入る。ハイクラスな外資系ホテルの一階部分にあるフレンチの名店である。
よかった。ディナーのグレードを想像して、ワンピースにジャケット、パンプスという格好を選んでおいて。
個室に案内され、ウエイターが一度退室すると、風雅が口を開いた。
「純愛なんだよね」
風雅は真顔で言うけれど、その口調はけして重々しくはない。普段と同じ。
「確かに俺の愛情ってわかりづらいのかも。でも、希帆のことは高校時代に見初めた。元気で明るくて、きちんと自分の意見を持ってる。もう十年以上好きだって思い続けてる」
私の腰を抱いて、風雅は穏やかに微笑んでいる。本当に私といるときはいつも笑顔。機嫌の悪いところなんて何度かしか見たことないかも。
そう今朝方、夢に見たあのときくらい。私が同級生に階段から突き落とされたとき……。
「希帆、俺の顔じっと見てどうしたの?」
風雅が見下ろして言うので、私は自分が風雅の顔を凝視していたことに気づいた。
「ねえ、風雅。私に対してそんなににこにこしなくていいよ」
「希帆といると楽しいから、これが普通なんだけど」
「そう? 私は風雅のそういう腹の見えないところが結構嫌」
「ええ、厳しいなあ」
「だいたい、私のこと、本当に好きなの?」
電車が目的地の有楽町に到着する。風雅の腕を外し、先に降り立つ私。風雅が追いかけてきて、再び腰を抱いた。
「ちょっと、触んないで」
「さっきの話の続き。……好きだけど、そうは見えない?」
「見えない。親のために愛のない政略結婚だったって言われた方が自然。もしくは、手っ取り早く後継者を産んでくれそうな女がおまえだったって」
「ひどい思考だな~。俺ってそういうこと言うヤツに見える?」
「意味がわからないの。私と風雅の間に恋愛感情はなかったし、これからも生まれないと思う」
風雅の予約していたレストランは目の前だ。私たちは一度会話を止め、店内に入る。ハイクラスな外資系ホテルの一階部分にあるフレンチの名店である。
よかった。ディナーのグレードを想像して、ワンピースにジャケット、パンプスという格好を選んでおいて。
個室に案内され、ウエイターが一度退室すると、風雅が口を開いた。
「純愛なんだよね」
風雅は真顔で言うけれど、その口調はけして重々しくはない。普段と同じ。
「確かに俺の愛情ってわかりづらいのかも。でも、希帆のことは高校時代に見初めた。元気で明るくて、きちんと自分の意見を持ってる。もう十年以上好きだって思い続けてる」



