仮面夫婦の子作り事情~一途な御曹司は溢れる激愛を隠さない~

お父様は言葉を切って、私を見つめる。

「そんな息子だから心配という部分もあって。ひとりでどこまでも突っ走っていってしまうんじゃないかって。希帆ちゃんが高校時代にやんちゃをしている風雅の手綱を握っていてくれたことは知ってる」
「いえいえ、私なんか……」

言ったものの、おそらく当時の担任あたりから私と風雅の情報は漏洩しているだろう。

「希帆ちゃんが風雅の隣にいてくれるというだけで僕は安心だよ。きみは亡くなった風雅の母親に雰囲気が似ていてね。チャキチャキしていて、しっかり者で。高校時代に希帆ちゃんが婚約を受けてくれた頃から、私はずっときみに感謝しているよ」
「もったいないお言葉です、お父様」

そこからは、仕事の話や帰国しての話など、世間話をしながら風雅を待った。お父様の体調が思ったより良さそうなことにホッとしつつ、やはり子どものことは、あまり遠くない未来に検討しなければならないと考える。

当初の私の計画では、性交渉などはなしの形式上の夫婦のつもりでいた。しかし、風雅とゆっくりでも普通の夫婦を目指すと約束してしまった以上、いずれは子どもを産むのが、左門家長男の嫁の仕事だろう。
この優しいお父様に孫の顔を見せてあげたいと風雅は思っているだろうし、私も吝かではない。

ただ風雅と抱き合うイメージができないし、踏ん切りがつかない。
そうだ、いきなり子作りに前向きなことを口にすると、すぐに押し倒されそうだから、もう少し様子を見よう。
子作りは禁止のままで!

「親父、希帆、遅くなった~」

風雅が呑気な声をあげながら病室に現れたのはそれから間もなくだった。