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目覚めると、そこはキングサイズのベッド。
私は二十八歳に戻っていて、広々としたベッドは私ひとりのものだ。
「懐かしい夢見たなあ」
身体を起こしてうーんと伸びをする。
風雅と入籍して一週間が経った。私は風雅と平和に新婚生活を送っていた。
初日にはっきり拒否して以来、風雅は私に強引に迫ってくることはない。寝室のベッドを明け渡し、自分はソファで寝起きしている。
逆でいいと言ったけれど「俺のほうが帰宅も寝るのも遅いし、いいよ」とのことだ。確かに風雅は忙しく、帰宅は深夜である。
お父様が倒れて以来、社長の代行をしているのだから、本当は結婚や新婚生活に時間を割いている場合じゃないと思う。
「希帆、おはよ~」
そんな風雅がドアの向こうで呼んでいる。私はいつも通りルームウェアのままのそのそと寝室から出た。
「おはよう、風雅」
「朝ごはんできてるよ」
部屋を出てついていけば、今日も風雅特製の朝ごはんがダイニングに並んでいる。ホームベーカリーで焼いたパン、ポタージュスープ、目玉焼きに温野菜にフルーツヨーグルト。
「毎日、こんなにいいのに」
「だって、希帆とふたりでゆっくり過ごせるのって今のところ朝ごはんしかないし」
風雅の多忙さゆえ、夕食は完全に別々だ。朝食は風雅たっての希望で任せているけれど、毎日しっかりしたメニューを用意してくれる。
「向こうでは朝って何食べてたの?」
「いや、普通にコンビニで買ったパンとか。あとは朝市が近所にあったから、麺線っていうそうめんのスープとか、豆乳のスープと揚げパンとか」
「へぇ、俺、台湾って大安リビング公司の件のとき、一回行ったきりだからなあ。ホテルだと普通に洋食の朝食だった。向こうっぽい料理食べてないなあ。会食で小籠包は出たけど」



