仮面夫婦の子作り事情~一途な御曹司は溢れる激愛を隠さない~

『そうして。こんなことどうってことないんだから』

風雅の空気が元に戻った。よかった。私はひそかに安堵の息をついた。

風雅には力がある。人間的な魅力のレベルでいえば、ある種の天才なのだと思う。人を惹きつけ、狂わせる。
風雅に恋した彼女は、手に入らない恋に狂って私を害した。この先も恋に限らず強い感情の下、風雅に狂う人間は多く出るのではないだろうか。
それはきっと支配者の資質。いずれ父親の会社を継ぎ、榮西のトップになるのに相応しい資質。
薄皮のような笑顔に巧妙に隠れているけれど、一皮むけば、冷徹な芯の部分が見えてくる。

私のためにそんな本性を見せた風雅は、私の言葉でないと止められなかった。名実ともにお守役になってしまった。それでも、風雅が明るい笑顔だけを見せて学校生活を送れるなら、その方がいい。

『ねえ、希帆、大学出たらうちの会社はいらない?』

私の鞄を手に、並んで歩きながら風雅が言った。

『は? 風雅の?』
『俺の直属の部下とかどうかな。一応所属は榮西株式会社になるから、希帆のご両親とは会社違っちゃうけど。希帆みたいに生命力にあふれてて、強い人が一緒にいてくれると元気もらえるなあ』
『絶対やだ。風雅のそばなんて』
『冷た~い。榮西、もっとでかくなる会社だよ。俺もでかくするし、一緒に大きくしない?』
『いや。いつまでも風雅のお守係ではいたくない』

風雅はそれでも楽しそうに笑っていた。今思えば、風雅はこの頃私との婚約を考えていたのかもしれない。
風雅が私を特別に見ていたことは間違いないだろう。愛や恋ではない次元で。