仮面夫婦の子作り事情~一途な御曹司は溢れる激愛を隠さない~

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高校時代、何度も風雅を狙う女子たちに絡まれた。
その都度堂々と言い返し、負けない女だった私だけれど、幾度かはシャレにならないこともあった。

中でも一番ひどかったのは階段から突き落とされた件だろう。
あれは高校二年の冬、風雅に振られた同級生が私を逆恨みして食ってかかってきたのだ。
私は風雅と付き合っていないし、何よりそんなことで私に文句を言わないで。
主張したものの、頭に血が上った彼女につかみかかられ、もみ合ううちに階段から突き落とされたのだ。人並以上にハートは強いほうだと思うけど、いかんせん学年で一番小柄な私はあっさり力負けしてしまった。
しかし、そこは小さくとも頑健な私。怪我は軽い打ち身と足首のねんざで済んだ。

近くの接骨院で処置をしてもらい、雪の降りだした夕暮れ時に松葉杖をついて帰路についた。
接骨院のすぐ近くで風雅が待っていた。傘もささずにいたようで、髪には細かな雪がくっついていた。

『希帆、平気?』
『平気に見える?』

私は仏頂面で質問し返し、それから敢えて笑って見せた。

『ま、こんなもんで済んだから大丈夫よ。私、強いの。だけど、風雅のせいでとんでもない目にあったなあ』
『うん、俺のせいだね』

風雅の反応は予想と違った。沈鬱な表情は珍しく、風雅もこんな顔をするのだと驚いたくらいだ。
風雅狙いの女子に意地悪されるのは日常茶飯事で、私自身はすっかり慣れ切っていた。今回はちょっと大変だったけれど、怖かったとか悲しいなどという気持ちにはならない。
だから、風雅がいつもの調子で『希帆、強いね~。階段から落ちても捻挫だけとかウケる~』などと言ってくるのを待っていた。
それなのに、風雅は少々怖い顔をしている。