仮面夫婦の子作り事情~一途な御曹司は溢れる激愛を隠さない~

「希帆との関係がなくなったら、榮西が支援する理由がなくなるけど……」

一昨年にトップの交代で経営危機を迎えたこの会社は、現在榮西の傘下だ。榮西の事業は多方面に及び国内外問わないが、大安リビング公司の救済だけは風雅が一存で決めたらしい。私のための支援なのは疑いない。

「対企業だし、個人的な感情を差し挟むところじゃないからね。善処するよ」

風雅は明るく言うけれど、実際のところどうするかなんてわからない。突飛なことをするタイプの男だ。両親の件も、取引先の件も、風雅が「やっぱやーめた」と放りだせばおしまい。
両親がいきなり失職ということはないだろう。いまだ社長の座にあるお父様が黙っていないと思うし。
だけど、大安リビング公司はどうだろう。私にとっては上得意先のひとつ。無くなったら経済的に大打撃だ。
もちろん、他に仕事はある。その気になれば、また元の会社にやとってもらうことも、大学の教授の下で手伝いだってできる。生活はギリギリしていけるだろう。
だけど、私と風雅の関係でひとつの大きな会社の命運が決まるとなると……。

「……婚姻届、出す」
「希帆、ホント?」
「で、でも、すぐにそういうことは無理! すぐに完全同居も無理! めちゃくちゃ長い目で見てくれるなら……!」

自分で言いながら情けなくなる。これじゃあ、留学したときと一緒。逃げと先延ばしでしかない。
でも、風雅の気持ちが本気だなんて思わなかったんだもの。他に手立てが思い浮かばない。