仮面夫婦の子作り事情~一途な御曹司は溢れる激愛を隠さない~

『じゃあ、遠距離恋愛だね』

風雅はぽつんと言った。遠距離だけど恋愛じゃない。

『風雅、彼女作りなさいね。私のことは気にしなくていいから』
『女の子と遊ぶのは卒業したし。もうずっと希帆一筋なのに』

相変わらず軽い口調で言い、風雅は笑った。

『でも、希帆がやりたいことをやって、楽しく生きてくれるのが、俺は一番いいな。だから、見送るよ』
『……それはどうも』
『でも、年に一度は会おうね。婚約者なんだし』
『う、うん』
『うちの親父も、俺たちが三十になるくらいまでは現役で頑張るって言ってくれてるから、結婚はその頃かなぁ』

三十歳。それは十八歳の私には遠い遠い世界のことだった。ずっと先の未来だ。
その頃、私と風雅はきっと別のものを見ている。
風雅は私と婚約したことを若気の至りだと笑って、別な女性といるだろう。