仮面夫婦の子作り事情~一途な御曹司は溢れる激愛を隠さない~

私はそれまで考えていた進路を大幅に変更した。都内の有名大学はやめ、海外の大学に行くことにしたのだ。
私の学びたいインテリア工学や空間デザインが学べるところにしよう。英語力はそれなりにあるし、中国語も学んでいた。
そうだ。台湾にしよう。日本から近くてごはんが美味しい。一度旅行で行ったけれど、親切な人が多い印象だ。

そんな軽い気持ちで国外脱出を企てた。婚約しようが何をしようが、本人が日本にいなければ、それ以上なんの進展もしないはず。そうしているうちに、風雅も誰かほかにちょうどいい人……もしくは好きな人を見つけ、婚約を取り消したくなるだろう。

表向き、両親にも風雅にも内緒で国外脱出計画は練られた。バラしたのは高校三年生の年明け。国内の受験も押し迫る頃だった。

『希帆、俺と同じ大学行くんじゃなかったの?』

風雅はきょとんとしていた。学校の帰り道で雪がちらつく夕方だった。

『うん、台湾の大学で学びたいことがあるの』
『それはどうしても?』
『ええ』

婚約から逃げ出したい一心で企てた海外留学。しかし、数ヶ月調べて受験の準備をするうち、私はその大学の建築工学科に本気で通いたくなっていた。内装デザインや家具デザインに興味があったが、台湾独特の意匠をこらしたデザインには惹かれるものがあった。学科の卒業生の作品を見て、私もこういったものを作りたいと考えるようになっていた。