仮面夫婦の子作り事情~一途な御曹司は溢れる激愛を隠さない~

両親はこういうところがある。よかれと思って色々やることがまあまあ的外れなのだ。
私に興味のないバレエやピアノを習わせたり、苦手だと言ってもフリフリレースの服を買ってきたり。名門校受験もそうだ。

本人たちは仕事で忙しい分、罪滅ぼし的な気持ちで私に尽くしているらしいが、その最終着地点が社長の御子息との結婚とは……!

『なんでも、亡くなった左門社長の奥様と希帆は、雰囲気が似てるそうだよ。風雅くんと仲が良さそうに見えたのもよかったんだろうなあ』

左門社長……風雅のお父様とは、榮西グループのパーティー会場で会ったことがある。幹部とその家族の謝恩会でご挨拶はした。風雅はそのパーティー中も暇さえあれば私のもとへやってきて、ケーキを山盛り食べさせたりしていたっけ。
え? それが仲良さそうに見えたの!? ああ、こんなことになるなら、パーティーに行かなけりゃよかった。

『希帆に他にお付き合いしている男の子がいるなら……無理強いはできないけど……』

そう言って両親はちらりと私の様子を窺う。私が断れば両親はとても困るのだろう。
社長直々に息子の嫁にと言ってきている。榮西クリエイトは榮西グループの基軸となった企業で、父と母は役付。私が断れば両親の進退に関わるかもしれない。
私は簡単に断ってはいけない……のだろう。