仮面夫婦の子作り事情~一途な御曹司は溢れる激愛を隠さない~

もちろん適当で明るい男ゆえのトラブルはある。授業中にお腹が空いて近くのコンビニに行って戻ってこない。いきなり金髪に染めてピアスを開けまくってきて、校則違反で呼び出される。(本人は『え?ダメだったの?イメチェンしたのに』と悪びれることもなかった)体育祭の結果発表時に、男子数人と結託して花火をあげる。

とにかく伝説級の悪さを、三年間で何回もしている。しかし風雅は成績優秀で、大企業の御曹司。私立校の教師たちは、彼に強く言えない。そうなると教師もクラスメイトも、しょっちゅう一緒にいる私を『風雅係』とお守役に認定してしまった。

『風雅がいない! 沢渡、あいつどこ?』
『風雅がやらかした! 沢渡、ちゃんと手綱握っててくれ~』
『また風雅だ! 頼むよ、沢渡!』

知るか!!!! と何度叫んだろう。

さらには風雅の無駄なイケメン具合が、女子を引き寄せる。
風雅と付き合いたくて寄ってくる女子には、風雅係の私は邪魔以外の何物でもない。わざと肩や鞄をぶつけられるのなんて日常茶飯事。時には内履きを中庭の噴水に捨てられ、数学のノートに『色目使うな、ビッチ』と油性ペンで落書きされたことも。まあ、これらは全員犯人を捜しだして、証拠を突きだして『喧嘩売りたいなら正々堂々と売りなさい』と断罪してやったけれど。

風雅は自分のせいで私が巻き込まれると知っていて、『希帆は強いね~』と拍手していたっけ。

『風雅がちゃんと彼女を作ればいいのよ』

私はよく文句を言ったものだ。