仮面夫婦の子作り事情~一途な御曹司は溢れる激愛を隠さない~

それから私は悉く左門風雅に振り回された。
朝から晩まで何かというと話しかけてくる風雅。
『希帆、遊ぼう』『学食で一番美味いの教えて』『希帆、部活見に行こう』『一緒に帰ろう』
こんなのは可愛い方で、もれなく余分なひと言がついてくる。

『希帆、ちっちゃいからそこの棚掃除は無理じゃない?』『食べ方が本物のハムスターみたいだね』『短気って言われるでしょ、すぐ怒るもんね』『あはは、希帆、そんなに伸びあがっても背は伸びないよ~』

無神経極まりないこの男が、毎日私の周りをうろついている。
当然、私は断固拒否の姿勢を示した。しかし、クラス委員決めでは早々に風雅が「俺と沢渡でやりまーす」と立候補してしまい、敢え無くふたりで行動しなければならないことに。

毎日つきまとわれ、つつき倒され、その都度怒っても聞きやしない。この頃の私を、女友達たちは『子犬ならストレスで病気になってる』『かわいがられ過ぎてヒステリー気味になった子猫』『小学生男子のはじめてのペット』などと憐れんでくれた。
同情するなら助けてほしいのだけど、『いや、あれだけなついてる風雅くんを希帆から引き離せないよ』と笑っていたから、たぶん面白がられていたのだと思う。

一方で、風雅はクラスでもクラス外でも人気者だった。天性の陽キャとでもいえばいいのだろうか。誰とでも仲良く喋り、誰とでも一緒に行動する。背が高く、顔が良く、御曹司。そんな彼がなつっこく寄ってきて、『ねえねえ、次の移動教室どこだっけ? 俺、全然聞いてなかった。連れてって~』と絡んでくるのだ。
『テスト終わったら、クラス全員で焼肉行こうよ』なんて、あの整いまくった顔と明るい声で誘われたら、いじめなんて起こる余地もない。みんながみんな、彼の虜になってしまう。