仮面夫婦の子作り事情~一途な御曹司は溢れる激愛を隠さない~

父の勤め先の御曹司なのは重々承知。だけど、距離感意味不明、人をハムスター呼ばわりする男とこれ以上打ち解けて話す気はない。

『えーと、じゃあ、希帆って呼ぶね。俺のことは風雅って名前で呼んでいいよ』

私の嫌悪の感情はまったく届いていないようだ。風雅はキラキラのいい笑顔でそんなことを言う。

『希帆は俺の高校で第一号の友達だから』
『あなたみたいな空気が読めない人と友達になりたくない』

私ははっきりと言いきった。なお、このやりとりはすでにクラス中に注目の的となっている。
目立つ外部入学の御曹司と、学内で一番小柄でそこそこ優等生の女子が、ぴりぴりの空気感で対峙している光景だ。
風雅は私の苛立ちなど意にも介さない様子で微笑んだ。私の両手をぎゅっと大きな手で包み、ぶんぶん縦に振った。これは握手?

『じゃあ、俺、希帆に友達認定してもらえるまで頑張る』
『は?』
『希帆のこと気に入ったし、仲良くしたいな』
『はあ!?』

私は嫌ですが!! と思ったものの、それを言い返す前に風雅は手を離し、楽しそうにどこかへ行ってしまった。ぽつんと教室に佇む私を、クラスメイトもまた困惑気味に見ていた。
左門風雅、変なヤツ……。誰もがそう思っただろう。

これが私と風雅のスタートだった。