仮面夫婦の子作り事情~一途な御曹司は溢れる激愛を隠さない~

『サワタリキホ。キホちゃんっていうんだ』

前の席から振り返り、椅子の背もたれを抱え、彼は私を見つめた。入学式と始業式の後、新しい環境でざわめくクラスで。

『身長何センチ? 150センチある?』

いきなり身長を聞かれ、私はむっとした。当時の私の身長は147センチで、学年内でも抜群に小柄だったのだ。

『可愛いね。顔も口も手もちっちゃくて、目だけ大きくて、ハムスターみたい』
『あの……私用事あるから』

ホームルームも終了、今日は帰るのみだ。
なにより、左門風雅には関わらないと決めている。親があなたの親御さんの会社に勤めてるの、なんてアピールは絶対にしない。

『ねえ、ハムちゃん』
『ハムちゃんって何よ。……ごめん、行くわね』
『待ってよ、ご両親、うちの親父の会社に務めてない?』

私はぴたっと止まった。いきなりバレてる……?

『親父から聞いてたんだ。親父の部下の娘が同級生にいるって、苗字聞いてたから、すぐわかった。ねえ、ハムちゃんは中学からここなんでしょ? 俺、まだわかんないことだらけだから教えてよ、この学校のこと』
『いや、私なんかが教えられること……ないんじゃないかな』
『そんなこと言わないでって。ね、俺たち友達になろうよ、ハムスターちゃん』

腕をがしっと掴まれ、咄嗟に振り払った。元来私は気が強い。

『離して。あと、私はハムスターじゃないから』