仮面夫婦の子作り事情~一途な御曹司は溢れる激愛を隠さない~



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私、沢渡希帆と左門風雅の出会いはクラスメイトとしてだった。

有名私立の中高一貫校は財界人の子弟も多く通う。私は親のミーハー精神でそこに入学させられた。
確かに親は国内有数の大手企業榮西グループの社員ではある。父は不動産関係の榮西クリエイトで部長職を務め、母も広報課の主任としてバリバリ働くキャリアウーマン。榮西株式会社はもともとこの不動産部門からスタートした企業だ。現在は分社化しているけれど、榮西クリエイトは榮西の中枢と言っていい。

その榮西グループ社長・左門雅弘の息子が高校から外部入学し、私と同じ学年になるらしい。内心嫌だと思った。なにしろ、両親の働く会社の御曹司である。同級生なのに上下の意識は持ちたくない。もし見つけても、知らん顔して三年間やり過ごそう。

そう考えていたら、この悲劇である。
クラスは一緒。出席番号は前後……。クラス分け表を見て、暗澹としてしまった。あとは本人が何も知らないのを祈るしかない。

中学からの持ち上がりが多い中、高校からの入学者はどうしてもマイノリティーに陥りやすい。しかし、入学式に現れた左門風雅の堂々とした佇まいに、生徒の誰もが視線釘づけだった。
身長は180センチ台後半だろう。手足が長く顔が小さい。さらに顔立ちが綺麗だった。女性的ともいえる中性的な目鼻立ちは、無表情では雰囲気があるミステリアスな美貌で、へらっと軽く笑えば愛嬌のある雰囲気になった。

クラスで挨拶をしたときも、明るく、少し軽そうに喋る彼は親しみやすく見えた。榮西グループの御曹司は、モデル並のルックスをそなえ、さらに気さくだったのか。天は二物も三物も与えるのね。感心していたら、向こうから話しかけてきた。