「みなさん、朝から何をやってるんですか?」


 私は涙目で、声が聞こえた方向を見つめる。

 そこには、登校してきたばかりの早瀬さんが立っていた。


 長い黒髪に手串を入れながら、目を細めて見つめてる。

 メガネのレンズ越しに輝く鋭い眼光に、カーストの子たちが体の動きを止めた。


「めんどくさい奴がきたしぃ……」


 ブツブツつぶやきながら、カーストの子たちは不快な表情。

 そして、理不尽な言い訳をはじめる。


「宇佐ぴょん、アタシたちと同じくらいスカート短くしたいんだってさ~」


「あら、そうでしたの?」


「足も細いし、似合うんじゃね?って話てたのよ」


「まあ、たしかに。そうかもしれないわね」


「でしょでしょ!そういうことだから、委員長ばいば~い!」


 そう言うと、カーストの子たちは教室へ向かっていった。


「早瀬さん、ありがとうございます……」


 靴を履き変えた早瀬さんは、私の顔を見て横に小首を傾げる。

 そして、ゆっくり口を開いた。


「スカートの長さを、相談してたのでしょう?」


「えっ……」


 私が嫌がらせされてるのを見て、助け船を出してくれたはず。

 でも、話を反らして知らないふり。

 早瀬さんは私より年下だけど、頭がキレる計算高い女子だ。


 私もこんなふうに立ち回れたら、もっと学校生活を楽しく過ごせたはず。

 この学校で普通に高校生活を送りたいだけの私だけど、思い通りにいかない。



 この後も、カーストの子たちは私に嫌がらせをしてくるのだろうか……