「一年後にまた会おう」
 蘭と別れた後。
 私はライト先生と共に辺境付近の児童養護施設にやってきた。
 何故、ライト先生と一緒なのか理解が出来ない。
 元々、ライト先生は私の家庭教師だった。
 結婚後も、嫁ぎ先の屋敷にやって来て、家庭教師として勉強を教えてくれていた。
 そんな先生が、侍女のサクラと共謀して私を誘拐したのだ。
 先生は家庭教師で、蘭の主治医…お医者さんでお金持ちそうなのに。
 私を誘拐した際、蘭に多額のお金を要求した。
 その誘拐事件は失敗に終わり、ライト先生とサクラは捕らえられた。
 …そこまでしか、聴かされていなかった。

 なのに。
 あの屋敷を出て、目の前にライト先生が現れた時は。
 震えあがってしまった。
「カレン君。君は、今日からクララと言う名前で僕と兄妹という設定だから」
 …設定って何?
 車に乗って連れられてきた養護施設。
 車から降りると沢山の子供たちがライト先生を取り囲んだ。
 一人の男の子と目が合うと。
「バケモノ!」
 と叫ばれた。
 それを筆頭に子供たちは私の顔を見て、キャーと悲鳴を上げた。
「僕の妹のクララだよ。今日から皆と一緒に暮らすよ」
 優し気な声でライト先生が説明する。
 その眼鏡の奥に光る目は全然、優しくないことを知るのは私だけなのかなって思った。