Your PrincessⅡ

 この国以外では、魔法使いが沢山いるんだ。
 そう言ってオババは昔話をよくしてくれた。
 変身が出来る魔法使いがいるし、空だって飛べる魔法使いだっている。
 そんな人達が世界中にいるんだから、祈祷師なんてたいしたことないのにねえ。
 オババが言っていた。
 オババはよく、胡散臭い祈祷師だと馬鹿にされてきた。

 そうか、この国で魔法は受け入れられていないのかと渚は考える。
 でも、実際にサクラとクリスは魔法をかけられている。

 一体、彼らがどんな事情で魔法をかけられたのかは聴けなかったけど。
 何故か、ワクワクした気持ちになった。
 渚は上手く喋れない日々を送っていたし、不愛想であったが。
 それでも、サクラもクリスも優しく接してくれた。
 シュロも大声で文句を言うわりには面倒見がよかった。

 気づけば、渚がこの家にやってきて1ヵ月が経とうとしていた。
 夕方、洗濯物を畳んでいるときだった。
「制服、小さくなってきたなあ」
 シャツを眺めながらクリスが言った。
 渚はタオルを畳みながら、じっとクリスのシャツを見つめた。
 クリスはシャツを置くと、渚を見た。
「渚はそろそろ学校に通えそう?」
「・・・え」
 まさか、そんなことを言われると思わなかったので、言葉が出てこない。
 てっきりこのまま学校には行かなくて良いのだと思い込んでいたからだ。
 そんな甘い考えが通じるわけじゃなかった。
「……」
 黙り込む渚にクリスは目をそらした。
「途中までは案内してあげるよ。制服は出しておくから」
「……」
 行きたくないよ。
 言えるわけがなかった。
 そんなこと言ったら、どんな酷い目に遭うのか。

 そもそも、自分のせいで家族が殺されたというのに。
 自分がのんびりと生きているわけにはいかなかった。

 どうしても、騎士団としての未来しかないのか…と渚は寝る前に泣いた。