「……」
渚が黙っていると、シュロとクリスも黙り込んだ。
「渚、リンゴでも食べるか?」
数秒の沈黙に耐えられないのか、思い立ったようにシュロが言った。
「いらない」
本当は食べてみたかったが、否定してしまった。
クリスは椅子に座り直したので、渚もクリスの前に座った。
「おまたせっ。リンゴむいてやったぜ!」
テーブルの上に、どんっとシュロがお皿を置いた。
「渚。食べなっ。シュロ、人の話聞かなかったみたいだから」
と言って勧められたので渚はリンゴを手に取って食べてみた。
シャクッとした食感にビックリした。
甘いとは思っていなかったので二重にビックリする。
「サクラと俺は、性別が変わるんだ」
「は?」
何を言っているんだと渚はクリスを見た。
と、クリスの髪の毛が急に肩にまで伸びているではないか。
「男の姿になったり、女の姿になったり…。そういうこと」
「ま、受け入れるのは大変だろうが長い目で見てやってくれ」
シュロはもぐもぐと口を動かしながらリンゴを食べていく。
「気持ち悪いと思うだろうけど、俺とサクラはそういう人間なんだ」
「…それって魔法なの?」
リンゴ片手に渚は首を傾げる。
皿に乗ったリンゴは、ほとんどシュロが食べてしまった。
まほう…とクリスは呟いた後、すげぇと言って目をキラキラさせた。
さっきまで男ぽい声だったクリスは、すっかりと女の子の声になっている。
「渚は魔法を信じてくれるのか?」
「…信じるもなにも、実際に魔法にかかっているから性別が変わるんじゃないの?」
シャクッという食感が口に広がる。
リンゴを食べたのは人生で初めてだった。
シャクシャクッという食感が初めてなので、ムズかゆく感じる。
「すげえな、おまえ」
リンゴを食べ終えたシュロがこっちを見てくる。
何か変なことを言ってしまっただろうかと渚は考える。
「そっか。海の一族はかつて世界中を旅してたって言ってたもんね」
なるほどと急にクリスが頷いたので、渚は更に疑問に思った。
「俺なんて、未だによくわかってねえもん」
お腹いっぱいなのか、シュロが自身のお腹を手でさすりながら言う。
「え、魔法じゃないの?」
「いや、魔法なんだ。ティルレット王国では魔法なんて存在しないと思われているからね。皆、信じてくれないし何よりも気持ち悪いって言われてきたからさ」
そうか…と渚は納得することが出来た。
この家に案内された際、学長も先生も近寄ろうとしなかった。
それはサクラとクリスを受け入れられないからだろう。
「ま、でもこの魔法のお陰で一軒家にタダで住んでいるわけだし。ラッキーなんだよね」
「…ということは、シュロさんも?」
ちらっと渚がシュロを見ると、シュロは頬をぷくーと膨らませていた。
それを見たクリスが、アハハハと笑い出す。
「シュロはね、魔法にはかかってないんだけど。成績がすんごく悪くてね…」
「要は馬鹿ってこと?」
渚がはっきり言うと、
「おまえに言われたくねえ!」
と大声でシュロが叫んだ。



