「おいっ、始まるぞ」
バシャツと音がしたかと思うと。
渚の顔面に水がかかっていた。
渚は目を開けようとしたが、顔面が痛くて、上手く目が開かないことに気づいた。
目の前には鉄柵がある。
渚は檻の中に入れられていた。
だが、牢屋の中ではない。
外にいる。
渚の側には、騎士団が囲っている。
檻の外で、にやりと笑っているのは、さっきまで戦っていたはずの金髪の青年だった。
よく晴れた空だった。
広場のような所だった。
腫れた目を凝らして、前方に何かがあることに気づいた。
そこへ向かって連れていかれる女性を見た渚は叫んだ。
「お母さん」
久しぶりに会う母は瘦せ細っていた。
ガタガタと震えているのが、遠くからでもわかった。
身体をロープでグルグル巻きにされている。
向かったその台には一つの側面に板が張り付けられており、真ん中に円形の穴が開いていて、そこに渚の母親の顔を押し込められた。
「お母さん、お母さん」
渚が叫ぶが、母には届いていないようだ。
母の後ろに立っているのは、姉2人だった。
姉2人はビチョビチョに顔を涙で濡らしている。
更に、その光景を遠くから眺めているギラギラした服を着て王冠を被った老人の姿が見える。
…誰がどう見ても国王だろう。
国王は、じっと無表情で渚の母を眺めている。
「やめろ、やめろー」
渚にはわかっていた。
何が起こるのかを。
懸命に叫び、鉄柵を揺らしたが状況は変わらない。
国王が、手を挙げると。
渚の母の、頭上にある・・・刃物が降ってきた。
「やめろー」
精一杯の大声を出した。
前を見ることが出来なかった。
罪人が死刑になる際に使用されるギロチンを…
目の前で・・・
母が・・・
「おまえが脱走さえしなければ、家族が死ぬことはなかったのにな」
金髪の男が渚に向かって言った。
その日、渚には呪いをかけられた。
誰にかけられたのかは、わからない。
その日から渚は成長しなくなったのだ。


