Your PrincessⅡ

 人を見かけたのは、羊使いであろう老人だけだった。
 ただひたすらに、渚は歩き続けるしかなかった。
 誰も歩いていない。
 車も通っていない。
 それでも、歩き続けるしかない。

 皆は無事だろうかと渚は考える。
 もう、日が暮れかけている。
 今夜は野宿かなあと呑気に考えていると。
 渚は前方から殺気を感じた。
 …この殺気は以前にも感じたことがあるような気がした。

 身に着けていた短剣を手に持つ。
 目の前に立っていた。
 見覚えがある。
 金髪の男だった。
 青い目で、渚を睨みつけていた。
 青い制服を着ていた。

 かつて、脱走をした際に壁の向こう側にいた男だ。
 何故、こんなところにいるのか。
「今度は、負けないからな」
 渚は声をあげて、男に近づいた。
 頭を殴られて気絶した過去を思い出した。
 あれから訓練に励んで充分強くなったつもりだ。

 渚が襲いかかると男は見事にかわした。
 渚はすぐに男に向かって剣を突きつける。
 何度も何度も、渚が突きつける剣を男はかわした。
 どれだけ、身軽なのだろうと渚は思った。
 一向に自分の剣が相手に命中することはなかった。
 男は、よけ続けたかと思うとジャンプする。
 姿が見えないと渚がキョロキョロすると。
「失望した」
 と言う声が空から降ってきた。
 同時に男にかかと落としされた渚は倒れ込んだ。
 男は地面に渚の顔面を叩きつける。
 動こうにも男の力は凄く、顔が動かない。
 そのうちに息苦しくなってきた渚は意識を失った。