Your PrincessⅡ

 とにかく砂埃が凄い空間だった。
 目に砂が入って、何度も痛いと思ったことか。
 渚は無我夢中で、上級生が襲い掛かってくるのをかわし続けた。
 皆の様子を気に留めることが出来なかった。
 風が強く、視界は悪い上に次々と上級生がやってくる。
 一体、どれだけの上級生がいるんだと渚は思った。
 渚は逃げるようにかわして、とにかく前に突き進んだ。
 砂で見えない状況を逆手に取って一気に進んだ。

 風がやんで視界がはっきりとした所に来た時には誰もいないことに気づいた。
 でも、前に進むしかない。
 いつまで砂漠なんだ?
 本当にゴールはあるのだろうかと走り続けたところに。
 数台のトラックが見えた。
 上級生の姿がなければ、知り合いの顔も見えない。
 まだ、皆戦っているのだろうかと思いながらエンジンのかかっているトラックの荷台に入り込んだ。
 中には誰も乗っていなかった。
 渚は「疲れた」と独り言を言って、しゃがみ込んだ。
 トラックは動き出した。
 タイラは無事にトラックに乗ったのだろうか? それとも、まだだろうか。

 渚は不安になりながらも、帆布の隙間から外の景色を窺がう。
 トラックは砂漠を走り続けたかと思えば、橋を渡り始めた。
 まっすぐに進む橋の先に大きな門が待ち構えている。
 そこを通る際、トラックが止まって、門番らしき人がチラリと荷台の中をのぞき込んだ。
 渚は見つからないように荷物の後ろに隠れた。

 トラックはまた走り出す。
 次第に舗装された道路を走っていく。
 そして、民家が見えたかと思えばトラックがゆっくりと停止する。
 渚は外の様子を見て、安全なことを確認すると素早く外に出た。
 前を見ると、道路をゆっくりと羊が横断しているではないか。

 渚は羊に向かって、ありがとう羊さんと心の中で感謝した。
 脱出に成功したのだ。
 渚は人のいないところへと走った。
 …自分は国のどこら辺にいるかはわからない。

 母と姉は王家の領土にいるはずだ。
 まずは首都へ行って情報収取するしかない。

 制服は目立つので上着だけ脱いでしまっている。
 半袖なので渚は腕をさすった。
 一面が畑だ。
 ぽつぽつと民家が見える。
 もう少し、トラックに乗っておくべきだったか。
 いや、ずっと乗っていたらどのタイミングで降りればいいのかわからなくなる。
「とりあえず、歩こう」
 渚は歩き始めた。
 羊が歩くのどかな田舎の風景を見ながら、
 焦る必要はないと、ゆっくりと歩き出す。