Your PrincessⅡ

 逃げ出すことを渚はキョンに素直に打ち明けると。
 キョンは協力すると言ってくれた。
 渚はどうして、自分に優しくしてくれるのかとキョンに尋ねると。
 キョンは意外なことを口にした。
「君は、やる気がないから」
 優等生の言うようなセリフだとカチンと渚は頭にきた。
 だが、確かに渚はやる気がなかった。

 授業に出ても、まず渚は文字が読めないことに気づいた。
 ティルレットの人間が使う文字が読めないのだ。
 教科書を読むふりだけをして、適当に聞き流す。
 そして、身体を張った訓練でも適当にやり過ごしていた。
 キョンにはバレていたのだ。

 キョンは、「売られた」と言っていたのだがら自分の意志で騎士団に入団したわけじゃないのだろう。だが、真面目に授業を受けているのが渚にとっては不思議であった。

 渚はキョンの協力の元、夜中に宿舎を抜け出して脱出を試みた。
 看守はずっと廊下に立っているわけではない。
 居なくなったのを見計らって渚は静かに廊下を駆けて外に出た。
 案外、あっさりと見つからずに外に出られたことに拍子抜けする。

 校舎の裏に誰も居ないのを確認した渚は、例の穴の場所の前に立った。
 ほふく前進をしながら、穴を何とか通り抜けて。
 ここを脱出した後はどうするかと考える。
 家族がどこにいるのか、はたまた生きているのかはわからない。
 ともかく脱出してから考えようと渚は思った。

 穴から出て、渚は立ち上がると。
「やったあ」と声を漏らした。
 こんなに簡単に抜け出せるならば、もっと早く行動に移していればよかったと後悔した。
 渚は思わず笑みをこぼして走り抜けようと前を見た瞬間。
 誰かがこっちを見ているのに気づいた。
 暗くてわからなかったが、
 月の光ではっきりとそのシルエットが映し出される。

 自分よりもさほど年の変わらないであろう少年が、じっと渚を睨んでいた。
 制服を来ているので同じ少年騎士団であろうと渚は悟った。
 何故、こんなところに少年騎士団が立っているのかと思いながらも、見つかったからには逃げなければと渚は走り出す。
 だが、少年は猛スピードで渚に近寄ると棒のようなもので渚の頭を殴った。
 渚はその場で倒れ込んだ。
「阿呆っ」
 見上げると、女のような綺麗な顔立ちをした少年が渚を見下ろしていたのであった。