「なあ、大丈夫か、大丈夫か」
聞きなれない声だった。
渚がゆっくりと目を覚ますと知らない男の子が心配そうに渚を眺めていた。
意識を取り戻したと同時に頭に激痛が走る。
渚は、手で後頭部に触れると大きなたんこぶが出来ているのを知った。
「だあっ」
自分でもビックリするような悲鳴が辺りに響き渡る。
飛び跳ねた渚は、「オババはどうした」と叫んだ。
キョロキョロと見回すと。
村じゃなかった。
ジメジメとした空間、岩で出来た壁。
そして鉄格子。
驚いた顔で渚を見つめる知らない男の子…。
「うなされていたようだったから」
じっと渚を見つめている男の子に、渚は黙り込んだ。
夢を見ているのかと思い、一度しゃがみ込んだ。
だが、頭は痛いし。
暫く経っても何も変化はなかった。
「…ここ、どこだ?」
渚は、男の子に向かって言った。
男の子は、渚と同い年ぐらいだろうか?
部屋は薄暗かったが、男の子は褐色の肌に黒い髪の毛をしている…ように見えた。
「牢屋だよ」
男の子は無表情で答える。
「牢屋? 何で…」
と、同時に渚は青ざめた。
オババを助けようと走り出した瞬間、後ろから誰かに頭を殴られたのだ。
「国家…騎士団か?」
同意を求めるために、男の子の顔を見ると。
男の子は首を傾げた。
「僕は売られただけだから、国家騎士団かはわからない」
「売られた…?」
何を言っているのか渚には理解出来なかった。
自分は何故、ここにいるのか。
泣きそうになる。
「僕の名前は、キョン。君は?」
渚が頭をおさえこんでいる間、男の子はのんきに自己紹介を始めた。
「俺は、マリク。君も村から連れ去られたんだろ?」
「村? いや、だから僕は売られたんだって」
「…キョンは、海の一族じゃないのか?」
同じ仲間だと勝手に思い込んでいた渚は落胆する。
だが、どう見ても目の前にいる男の子は同じ一族の姿をしている。
「俺、捨て子だからわかんないんだ。両親のどちらかが、マリクの言う…海の一族だっけ? らしいんだけど」
「捨て子って何だよ…」
一向に噛み合わないキョンとの会話にイライラしながらも、渚は座り込んだ。
「捨て子は捨て子だよ」
少しだけキョンが怒ったように言うので、渚はため息をついた。
「何で、ここにいるのかがわからない」
「…そりゃあ、国のために働かされるんだろ?」
何を言っているんだとばかりにキョンが言い始めたので。
渚はキョンを睨みつけた。
「どうしてキョンはそんなに落ち着いてられんだよっ」


