今、考えてみれば。
 ライト先生と一緒に山登りや一日、20km近く歩かされたのは、このイベントの為だったと理解する。
 この一年、週に何度かライト先生と共に苦行を強いられてきたけど。
 コレだったのか・・・。

 蘭を先頭にずんずんと進んでいく。
 途中までは、見覚えのある道だったので、あれ? と思っていると。
「立ち入り禁止」のゲートが見えた。
「おい、蘭。立ち入り禁止だぞ」
 あんなに重たい荷物を背負っているにも関わらず息一つ乱れない姿でシュロさんが言った。
「大丈夫だ、この先も俺の領地だ」
 このやりとり、どこかで聞いたなあと苦笑しながらも、ゲートを越える。
 太陽が昇り始めている。
 辿り着いた湖を見て、懐かしいと思いながらも。
 蘭と過ごした芝生は見事にスルーして湖の方へ直行していく。
「あれ?」
 湖には、船が一隻ポツンと置いてある。
 近寄ると、遠目で見た感覚よりもはるかに大きい。
 木製で、白い帆が大きく風で波打っている。
 実際に船を見るのは人生で初めてだった。

 船の前で固まっていると。
 皆が次々と船に乗り始めた。
「カレン、早く乗りなよ」
 渚くんに言われて慌てて船に乗る。

 もう、完全に冒険の世界ではないかと思った。
 船に乗るのも初めてだ。
 この冒険の道のりは厳しいんだろうなと今更になって、ため息をつく。
 昨日、蘭が説明していた時、渚くんとサクラが青ざめていたのはこういうことだったのかなあ…と理解した。
 簡単に行けるわけが…なかった。

 船がゆっくりと動き出した。
 そういえば、この船は一体どこからやってきたのだろうなと疑問に思ったけど。
 考えるのをやめた。
 と、いうのも。
 動き出した船と同時に、
 私の体調がどんどんと悪くなっていったからだ。