「カレン、時間よ。起きなさい」
 身体を揺すられて、目を覚ましたけど。
 窓の外は真っ暗だったので、
「まだ夜だけど」
 と不満げにサクラに言った。
 うっすらと視界に入るサクラは、男の格好をしているではないか。
 動きやすい服装でサクラが立っている。
「もう夜明けよ! 早く準備しなさいっ」
 慣れないサクラの低い声に身体を起こすと。
 昨日の蘭の言葉が蘇ってきた。
 夢だったのかなと思いながらも、「綺麗になった」という蘭の言葉が頭に流れて。
 きゃぁぁぁと恥ずかしくなる。
 何で、あんな恥ずかしいこと平気で言えるんだろう。

 どんな表情をしていたのかは自分ではわからなかった。
「ニヤニヤするのはいいけど、早く支度しなさいっ!」
 側にいたサクラにバシッと背中を叩かれてしまう。


 身支度が終わると。
 サクラは、「それ持って」と言って大きなリュックを指さした。
 いつのまに用意してくれたのだろう?
 背負ってみると、あまりの重さに身体がよろめいた。
「何で、こんなに荷物が必要なの?」
「なんでって、目的地まで一週間もかかるのよ。それでも、少ないくらいよ。シュロなんて、食糧や水も持っていくんだから相当大変なんだからね」
「え…、一週間?」
 聴き間違えじゃないかと耳を疑う。

 よろつきながら、下に降りて。
 外に出ると、既に皆が揃っていた。
 それぞれ、重そうなリュックを背負っているではないか。
 特に、シュロさんは皆が背負っているリュックの2倍の荷物を持っていた。
「全員、揃ったな。行くぞ」
 蘭の一声で、私以外の4人が「オー」と言って声をあげた。
 日帰り程度だと思い込んでいた自分の考えを呪いたいと思った。