もやもやとした気持ちを抱えたまま、
朝がやってきて、身支度をして朝食を食べて…
一日が始まる。
目的地に向かって歩くのみ・・・なんだけど。
私が二度も体調を崩したせいで予定よりも遅れているのではないかと、ずっと気がかりだった。
延々と続くかと思われる森を抜けた後。
目の前に、いかにも怪しげな洞窟が出てきたときは、嫌な予感に襲われた。
「この洞窟を抜けたら、目的地の神殿に到着だ」
爽やかに笑う蘭を見て。
私は本当に? と疑ってしまう。
洞窟を覗くと、先が見えないで真っ暗なままだ。
アドベンチャーものの小説ならば、
洞窟の中に、敵が現れるというシチュエーションだけれど…
「ねえ、蘭。本当にここ進むの?」
私の声を代弁したかのように渚くんが言った。
「神殿への通り道はここしかないっ。行くぞ」
蘭が一人、すたすたと進んでいく。
だけど、すぐに「ぎゃー」という悲鳴が聞こえたので、私と渚くんは顔を合わせて「ぎゃー」と叫んだ。
血相を変えて戻ってきた蘭の後ろから。
見たことのない動物がバタバタと空に向かって飛んで行った。
「何かがいた…」
蘭が青ざめているのを見て、ギャハハハとサクラが一人大笑いしている。
「コウモリよ。貴族のお坊ちゃんは見たことないから驚くのも無理はないわ」
「…おまえも貴族の坊ちゃんだろ」
サクラの嫌味に、ボソッと蘭が言ったが、
サクラは嬉しそうにフフッと笑った。
「私が先頭になって進むわ。シュロ。あんたは私の後ろね。変なのが出たらあんたが退治しなさい」
「…俺、コウモリ料理は作ったことないぞ」
シュロさんが絡むと、会話が成立しないんだなとぼんやりと突っ込みながら。
先頭にサクラ、その後ろにシュロさん、蘭、渚くん、私、クリスさんという順番で洞窟の中を進んで行く。
洞窟の中はひんやりとしていて、進むにつれて道幅が狭くなっていく。
ランタンを持ったサクラがずんずんと進んで行く。
「ねえ、サクラさん。怖くないの?」
渚くんは蘭の服にぎゅっとしがみついた。
綺麗好きの蘭はスキンシップを取られるのを凄く嫌がるはずなのに。
今回は、自分自身もちょっと怖いのか、渚くんの手を取り払おうとはしなかった。
「渚はお子ちゃまねえ。歌でも歌えば、大丈夫よ。何か、歌いなさいよ」
先頭で言うサクラの声が響く。
渚くんは、海の一族の言葉で歌い始めた。
それに合わせて、蘭も歌い始める。
「え、蘭。海の一族の言葉わかるの?」
思わず、言うと。
「お母さんから習った」
さらりと言いのけて、歌い続ける。
暗闇をただひたすら突き進むのは怖いけど。
先頭にいるサクラのほうが、よっぽど怖いだろうと考える。
この洞窟を一人で歩けと言われたら泣いて全力で拒否すると思う。
時折、地面がぬかるんでいて滑りそうになったりしながら、
まっすぐまっすぐ進んで行く。
一筋の光が見えた時。
「ゴールだ」
と蘭が言った。
朝がやってきて、身支度をして朝食を食べて…
一日が始まる。
目的地に向かって歩くのみ・・・なんだけど。
私が二度も体調を崩したせいで予定よりも遅れているのではないかと、ずっと気がかりだった。
延々と続くかと思われる森を抜けた後。
目の前に、いかにも怪しげな洞窟が出てきたときは、嫌な予感に襲われた。
「この洞窟を抜けたら、目的地の神殿に到着だ」
爽やかに笑う蘭を見て。
私は本当に? と疑ってしまう。
洞窟を覗くと、先が見えないで真っ暗なままだ。
アドベンチャーものの小説ならば、
洞窟の中に、敵が現れるというシチュエーションだけれど…
「ねえ、蘭。本当にここ進むの?」
私の声を代弁したかのように渚くんが言った。
「神殿への通り道はここしかないっ。行くぞ」
蘭が一人、すたすたと進んでいく。
だけど、すぐに「ぎゃー」という悲鳴が聞こえたので、私と渚くんは顔を合わせて「ぎゃー」と叫んだ。
血相を変えて戻ってきた蘭の後ろから。
見たことのない動物がバタバタと空に向かって飛んで行った。
「何かがいた…」
蘭が青ざめているのを見て、ギャハハハとサクラが一人大笑いしている。
「コウモリよ。貴族のお坊ちゃんは見たことないから驚くのも無理はないわ」
「…おまえも貴族の坊ちゃんだろ」
サクラの嫌味に、ボソッと蘭が言ったが、
サクラは嬉しそうにフフッと笑った。
「私が先頭になって進むわ。シュロ。あんたは私の後ろね。変なのが出たらあんたが退治しなさい」
「…俺、コウモリ料理は作ったことないぞ」
シュロさんが絡むと、会話が成立しないんだなとぼんやりと突っ込みながら。
先頭にサクラ、その後ろにシュロさん、蘭、渚くん、私、クリスさんという順番で洞窟の中を進んで行く。
洞窟の中はひんやりとしていて、進むにつれて道幅が狭くなっていく。
ランタンを持ったサクラがずんずんと進んで行く。
「ねえ、サクラさん。怖くないの?」
渚くんは蘭の服にぎゅっとしがみついた。
綺麗好きの蘭はスキンシップを取られるのを凄く嫌がるはずなのに。
今回は、自分自身もちょっと怖いのか、渚くんの手を取り払おうとはしなかった。
「渚はお子ちゃまねえ。歌でも歌えば、大丈夫よ。何か、歌いなさいよ」
先頭で言うサクラの声が響く。
渚くんは、海の一族の言葉で歌い始めた。
それに合わせて、蘭も歌い始める。
「え、蘭。海の一族の言葉わかるの?」
思わず、言うと。
「お母さんから習った」
さらりと言いのけて、歌い続ける。
暗闇をただひたすら突き進むのは怖いけど。
先頭にいるサクラのほうが、よっぽど怖いだろうと考える。
この洞窟を一人で歩けと言われたら泣いて全力で拒否すると思う。
時折、地面がぬかるんでいて滑りそうになったりしながら、
まっすぐまっすぐ進んで行く。
一筋の光が見えた時。
「ゴールだ」
と蘭が言った。