事件が起きたのは、蘭が15歳になる年だった。
 あと少しで青年騎士団学校を卒業する頃だった。

 事件が起きた場所は学校ではなく、蘭の家の近くだった。
 命を狙われることは、もうないと思っていたはずなのに。
 蘭はスペンサー伯爵の治める領土に住んでいる平民に襲われそうになった。
 アズマが助けようとしてくれたところは覚えている。
 蘭が頭を殴られて気絶していたので、その時の状況はわからずじまいだ。
 だが、目を覚ました時。
 アズマはお腹から大量の血を流して倒れていた。

 病院に運ばれたが、アズマの意識は戻らなかった。
 蘭は自分のせいだと、自身を責めた。
 アズマは自分の味方だった。
 いつまでも、自分の味方だった。

 アズマが病院を抜け出した時は、血眼になってアズマを探した。
 だが、アズマの目撃情報はなかった。