後になって考えると。
 命を狙われている自分が一人でアズマの妹に会いに行くとはなんて危険なのだろうと気づいた。
 だが、あの時。放たれた矢は刺客のものじゃなかった。
 養父の部下が弓矢の練習の際、誤って飛んできたものだと後からアズマに教えてもらった。それならば、どうして養父は真実を蘭に告げなかったのだろうかと考える。
「蘭様が命を狙われているのは事実なのです」
 アズマの一言に蘭は落ち込んだ。

 自分の本当の父親には奥さんがいて、
 自分の本当の母親は愛人というポジションだということを理解できるようになってからは、
 母親と別れて良かったと思うようになった。
 母は息子を守るために、祖国を離れて海外へと一人旅立った。
 きっと、一緒にいたら母は殺されていたのかもしれない。

 自分の本当の父親だと名乗る人物に初めて会ったのは、蘭が13歳のときだ。
 70歳過ぎた老人が目の前にいたので、まさかその老人が自分の父親だとは思わなかった。
 父親の側には、異国の少年が立っていた。
 蘭は彼がすぐに自分の兄であることがわかった。
 幼い頃から、夢で会っている男の子だった。

 兄の名前は、ローズと言う。
 自己紹介されたが、蘭は夢の中で何度も会っていたのですんなりと受け入れることが出来た。
 それは、ローズのほうも同じ感覚だったのかもしれない。

 父と名乗る人間は、ローズを跡取りと決定し、
 蘭はローズの仕事の補佐をするよう命令した。