国中を渡り歩きながら暮らす生活は、ある日終わりを告げた。
 10年、上手く逃げていたはずなのに。
 あっさりと見つかってしまった。
 母親と少年の目の前に現れた男は、ある取引を持ち出した。
「もう、10年経てば時効かもしれませんが。まだ、安心は出来ません。そこで、ある提案をしましょう。お母様は海外へ逃亡する手配を致します。ご子息は、子供のいない伯爵家の養子になって頂くのです」
 母親は、渋っていたが。
 これは、息子の為だと言い聞かせ、男の言う事を受け入れた。

 蘭は、男の子の格好をさせられて、サングラスを取った。
 馬車に乗って、ある屋敷の前にまでやって来ると。
 母は、全力で蘭を抱きしめた。
「お母さんのことは、忘れなさい。新しいお母さんとお父さんのことだけを考えなさい」
 呪いは、その日に受けた。

 実の母親と別れ、出迎えてくれた養母に抱きしめられると。
 蘭は白目を剥いて倒れたのである。