サラサラとした黒髪が風でなびいていた。
 この国では珍しい碧い瞳がこっちを、じっと眺めている。
 白いシャツに黒ズボンというラフな格好だけど。
 スタイルの良さは健在だった。
 前会ったときは、ガリガリだったのに。
 鍛えていたのか、ある程度はガッチリした体つきになっている。

 1年振りの再会だというのに。
 声が出なかった。
 向こうも、どういうわけか。
 何も言わなかった。
 不覚にも、蘭ってこんなにカッコイイ人だったけ?
 と見とれてしまう。

 暫く、固まっていると。
「かーれんっ」
 と後ろから誰かに抱きつかれた。

「久しぶりだね。カレン」
 振り返ると、渚くんがいた。
 やっぱり、渚くんは変わらないんだなぁと。
 しみじみ思ってしまう。
「どうしたの? 中に入らないの?」
「え、ああ。そうだね」
 扉の前に立っている蘭を見ると、
「渚。人の邪魔するなっ」
 大声で言うので、身体をビクっと震わせる。
「ついでに、人の奥さんに抱きつくなっ」
 蘭の口から「奥さん」という言葉が出てきて。
 思わずニヤけてしまう自分がいた。

「ほんと、蘭ってうるさいよねー」
 口を尖らせる渚くんに、懐かしいと思ってしまう。

「ちょっと、蘭。扉さっさと閉めてよ。開けっ放しだと寒いのよ」
 女性の声に。
 もしやと思っていると。
 扉から出てきたのは、サクラだった。
 サクラは私を見たかと思うと、ニコッと笑って。
「好きな人との甘い時間は、自分の部屋でやってちょうだい」
 サクラの言葉に、蘭の顔はみるみると赤くなっていく。


「おまえらは、なんでそんなに邪魔したがるんだー!」
 

 蘭の大声が空に響き渡った。