Your PrincessⅡ

 目を真っ赤にして、サクラが一階へ降りると。
 ダイニングルームにいたのは、アズマだった。
 アズマは本を読んでいた。
「あ、サクラ様。おはようございます。何か召し上がりますか?」
「自分でやるからいい」
 低い声が出た。
 同時に、アズマに対して冷たく接してしまったことを後悔する。
 グラスに水を注いで一気飲みする。
 台所に、サンドイッチが用意されているのに気づいた。
 シュロが入院中の間はアズマや渚が食事を作っているという。

 チラリとサクラがアズマを見ると、アズマはサクラを見てにっこりと微笑んだ。
 その笑顔を見た瞬間、サクラはまた泣きそうになる。
「サクラ様、何か欲しいものはありますか?」
「…ないわよ」
 思ってもいないことが口に出てしまう。
 話しかけられるのが嬉しいくせに、どうして冷たくなってしまうのか。
「じゃあ、願い事はありますか?」
 紫色の瞳でじっと見つめられると、飲み込まれそうで怖くなる。
「言ったところで、無駄でしょ」
 思わず大声が出てしまう。
 サクラはめまいを感じて椅子に座り込んだ。
 もう、どれくらいご飯を口にしていないのだろうか。
 頭をおさえる。
 アズマは立ち上がる。
「それは、言ってみなければわからないじゃないですか」
 サクラの前に跪いた。
 いきなり、サクラの手を握ってきたので、サクラは驚いて椅子から転げ落ちそうになった。
「無駄だって言ってるでしょ。私は騎士団をやめたいのよ。でも、選ばれし者なんでしょう? もう逃れられないんでしょう?」
 毎日泣き続けているというのに、サクラの目からはまた涙が零れる。
「私には上司がいますから」
 ニッコリとアズマが笑った。
「上司って…?」
「私の上司といえば、スペンサー伯爵様しかおりません。蘭様もおります。一度、ご相談をしてみます」