ずっと、夫である蘭に会いたいと思っていた。
だから、迎えに来るのは絶対に蘭だと思い込んでいた。
久しぶりに会うクリスさんに、嬉しいと思いながらも。
どこか落胆してしまっていた。
呆然と立っている自分に。
クリスさんは近寄った。
「一年ぶりだね」
クリスさんは背が伸びているかに感じた。
見上げると、爽やかな笑顔でクリスさんが私を見ている。
一年ぶりだというのに、急に何を話していいのかわからない。
黙り込んでいると。
「行こうか」
クリスさんは車を指さした。
「蘭が来れないから、代わりに俺が来たんだ」
何も言っていないのに。
クリスさんが言った。
「最後までアイツ、カレンちゃんのこと迎えに行くって暴れたけど。周りが許してくれなかったみたいでさ」
「…そうですか」
助手席に座って。
車は動き出す。
感動の再会…とは、あっけないものだなと感じる。
頭で描く再会とは全然違う。
せっかくクリスさんが迎えに来てくれたというのに。
蘭が迎えに来なかったというショックが大きい。
一年間、ずっと蘭が迎えに来てくれる光景ばかりを想像していたせいか。
しんみりと哀しい気持ちになってしまう。
「一年、元気でやってた?」
慣れた手つきで運転するクリスさんに見とれながら。
「…ええ、まあ」
と言葉を飲み込みながら答える。
クリスさんは「アハハハ」と声を出して笑い出す。
「そうだよね。施設で働いていたんだもんね」
「クリスさんは…」
と、質問しかけて。
あ、質問してはいけないんだと慌てて黙った。
謎の多い、かつて一緒に住んでいた館の住人達に質問をすることはNGとされていた。
ほとんど質問したところで「ごめん、それは答えられない」と跳ね返されてしまう。
思ったことを質問したところで、期待通りの答えなんて返ってこない。
「俺は色々と働いてたよ。みんな、それぞれ忙しく自分に与えられた業務をこなしてた」
「…そうですか」
その『業務』が一体何なの? と訊きたくても。
それ以上は訊くことができない。
前を見る。
霧が晴れて、前の視界が明るくなってくる。
「寝てていいからね。疲れるからさ」
「…はい」
優しくしてくれるのに。
素直になれないのは、どうしてだろう。
だから、迎えに来るのは絶対に蘭だと思い込んでいた。
久しぶりに会うクリスさんに、嬉しいと思いながらも。
どこか落胆してしまっていた。
呆然と立っている自分に。
クリスさんは近寄った。
「一年ぶりだね」
クリスさんは背が伸びているかに感じた。
見上げると、爽やかな笑顔でクリスさんが私を見ている。
一年ぶりだというのに、急に何を話していいのかわからない。
黙り込んでいると。
「行こうか」
クリスさんは車を指さした。
「蘭が来れないから、代わりに俺が来たんだ」
何も言っていないのに。
クリスさんが言った。
「最後までアイツ、カレンちゃんのこと迎えに行くって暴れたけど。周りが許してくれなかったみたいでさ」
「…そうですか」
助手席に座って。
車は動き出す。
感動の再会…とは、あっけないものだなと感じる。
頭で描く再会とは全然違う。
せっかくクリスさんが迎えに来てくれたというのに。
蘭が迎えに来なかったというショックが大きい。
一年間、ずっと蘭が迎えに来てくれる光景ばかりを想像していたせいか。
しんみりと哀しい気持ちになってしまう。
「一年、元気でやってた?」
慣れた手つきで運転するクリスさんに見とれながら。
「…ええ、まあ」
と言葉を飲み込みながら答える。
クリスさんは「アハハハ」と声を出して笑い出す。
「そうだよね。施設で働いていたんだもんね」
「クリスさんは…」
と、質問しかけて。
あ、質問してはいけないんだと慌てて黙った。
謎の多い、かつて一緒に住んでいた館の住人達に質問をすることはNGとされていた。
ほとんど質問したところで「ごめん、それは答えられない」と跳ね返されてしまう。
思ったことを質問したところで、期待通りの答えなんて返ってこない。
「俺は色々と働いてたよ。みんな、それぞれ忙しく自分に与えられた業務をこなしてた」
「…そうですか」
その『業務』が一体何なの? と訊きたくても。
それ以上は訊くことができない。
前を見る。
霧が晴れて、前の視界が明るくなってくる。
「寝てていいからね。疲れるからさ」
「…はい」
優しくしてくれるのに。
素直になれないのは、どうしてだろう。



