翌日。
 いつものように、ドニーは父と一緒に畑へと行く。
 本当はギルバードの(そば)にいるべきじゃないかと思ったが。
 一緒に過ごしたら、バレてしまいそうで怖かったのだ。
 いつも通りに過ごすように。
 父親に言われ、ドニーはそうすることにした。
 だが、悲しみが増えていく。

 夕方になって。
 家に帰ると。
 食卓に色とりどりの料理が並んでいたので。
 ドニーは「嗚呼」と落ち込んだ。
 叔母は本気なのだ。
 もう止めることも出来ないところまで、来てしまった。
「兄ちゃん、今日。誰かの誕生日?」
 何も知らない三男坊がドニーに質問する。
「……」
 ドニーは答えられなかった。

 5人の兄弟と父、そして叔母が食卓を囲う。
「いっぱい食べなさいねー。今日は叔母さんにとっての記念日なのよ」
「うわぁ、おいしそー」
 何も知らない弟たちが料理に手をつけていく。
 育ち盛りの兄弟たちがあっというまに皿を空にしてしまった。
 ドニーはあまり、食べることが出来なかった。
 
 叔母が片づけを終えて帰った後。
 兄弟たちは寝る支度をする。
「ギル」
 ドニーは思わず、弟に声をかける。
「何、兄ちゃん?」
 大きな目でのぞき込む弟の顔を見て、
 ドニーは何も言えなくなってしまう。
「何でもない、おやすみ」