焚き火の前でぼーとしていると。
 向こう側で蘭とサクラがコソコソと喋っているのが見えた。
 サクラが蘭の耳元で何かを話している。
 意外な組み合わせだなあと思ってじっと見てしまう。
 女性の姿になっているサクラと蘭があんな至近距離で喋っている。
 サクラが耳打ちしたかと思うと、蘭が「何を言ってんだよ」と大声を出して。
 サクラの頬を両手でぎゅっと潰した。
 変顔状態のサクラは「何すんのよお、このデリカシーなさ男めー」と怒る。

 サクラに触って大丈夫かなと思ったけど。
 そういえば、クリスさんが言ってたのを思い返した。
 蘭は、サクラに触るのは平気でクリスさんには触れられない。

 目の前で思いっきりサクラの顔に触れている蘭を見て。
 もやもやとした気持ちが広がっていく。
 やがてサクラはバシッと蘭の手を放してこっちにやってきた。
「蘭はデリカシーがないから、こっちで手を打つことにしたわ」
「はい?」
 何を言っているんだろうと考える暇もなく、
「クリス、渚、シュロー。私達は寝るわよー」
 と言った。
 4人はテントに吸い込まれて行った。

 残された私と、不機嫌そうな蘭だけが残った。