人の秘密なんて、知ったところで。
 こんなに胸が締め付けられるものだなんて思わなかった。
 何のための呪いなのか?
 私ならば、どう答えるのだろう・・・

 川から戻ってきた渚くんは自慢げに「見てよ、この大量の魚」と言って。
 網に入っている魚を見せてきた。
「流石、海の一族だな」
 と言ってクリスさんは褒める。
「俺も結構、釣ったぞ」
 と後ろで怒っているのは、蘭だ。
 蘭が手に持っている網にも何匹か魚が入っている。
 坊ちゃんのクセにちゃんと釣りが出来るんだと感心してしまう。
「カレン、聞いてよ。シュロなんて一匹しか釣れてないんだよお」
 爆笑しながら渚くんはシュロさんを指さした。
 シュロさんの持っている網には小魚一匹が入っているだけだ。
「俺、人生初めての釣りだからな」
 と、半ば落ち込み気味に言うシュロさんに。
「ま、楽しかったからいいんじゃね?」
 と、蘭が謎のフォローをした。

 テントでゆっくりと休んだおかげで。
 具合は良くなってきて、食欲も戻ってきた。
 夕飯は焼魚で蘭が釣った魚をまるまる一匹完食した。
 火を囲って、皆の顔を見ているうちに。
 だんだん、悲しい気持ちになってきて涙が出そうになった。
 騎士団として出会って、呪いを受けたこの5人の絆は相当深いんだと思う。
 そんな5人の絆に入り込む隙間なんてない気がした。

 さっき、クリスさんが言っていた「蘭の味方でいてあげて」の意味をずっと考えている。
 ほんと、私。この男について一切知らない。
 気づけば、無意識に蘭の顔を見ていたせいで。
 蘭がこっちを見た。
「何だよ、さっきから」
 と怒った顔で言うので。
「別に何も…」
 と目をそらした。

 就寝時はまた、誰が誰の隣で寝るかでギャーギャーと揉めた。
 テントは2つしかなくて。
 結局、私の隣にサクラ、サクラの隣にクリスさん。
 もう一つのテントに、渚くん、蘭、シュロさんが寝ることになった。
 寝る前に、渚くんが耳元でコソコソと言った。
「カレン、絶対にシュロに近づいちゃ駄目だからね」
 一体、シュロさんの何が危険だというのだろう?