砦の中にも、沢山の負傷者がいた。

どの人も結構な傷で、戦争や内紛なんて体験のない私は戸惑うばかり……。


そんな中でたどり着いた部屋に寝かされている、国の中の騎士のトップだろう騎士団長はかなりの火傷を負い、足には切り傷、肩には矢傷を負っていて、呼吸も浅い。

かなりの重症に、私は息を飲みつつその状態をしっかり見て、自身の魔力をその団長さんに注ぐイメージで、分からないなりに治癒を試みた。

自分の魔力で、傷が塞がり、火傷は新しい皮膚が再生するのをイメージして。

「治れ」

言葉と共に両手をかざして、魔力を降り注ぐ。

すると、淡い光に包まれて団長さんはみるみるうちに体の状態が良くなっていった。


表面上の傷が見当たらなくなったところで、私は手を下ろした。

すると、さっきまでかなり浅い息遣いだった団長さんの呼吸が落ち着いたことに気づく。

かなりの傷だったので、魔法で治したとはいえ休息は必要だろう。

ひとまず、危ない状態からは落ち着いたと確認できたので、それを伝える。


「傷は癒えたので、あとは休めば大丈夫かと思います」


後ろに控えていたジェラルドさんにそう告げると、ほっとした顔をした。