ただその考えは打ち消された。
はじめは廊下ですれ違うたびに挨拶をしてきてくれる彼にびっくりした。
でも慣れてくると、おはよとかお疲れとかバイバイとか、本当に些細なことだったけど、胸が弾んだ。
それがなんなのか、このときは自分でもわからなくて。
ただ水上くんがいい人だから、水上くんが優しい人だから、わたしとは正反対だから、だからわたしはそんな人と話せることが嬉しいんだと、そんな風に思っていた。
でもこれ以上はない。連絡先だって知らないし、もちろん遊ぶことだってないし、彼にとってわたしはただの友達。ううん。きっとそれ以下だ。
この先もそれは変わらない。
このときわたしはそう思っていた。



