「ああ。簡単なものだけどな」

「……嬉しい。ありがとうございます」

 この一週間、わたしは病院食しか食べていなかったから、家でご飯を食べるのは久しぶりに感じる。

「食べれるか?」

「はい。 あの、着替えても……」

 そういえば、服を着ていないままだった。着替えたいけど、爽太さんの前で着替えるのは恥ずかしい……。

「あ、ああ。すまない。 着替えるよな?扉締めるから」

「す、すみません……」

 急いで服を着替えてキッチンに行くと、美味しそうな香りがキッチンいっぱいに漂ってきた。

「いいニオイ……。美味しそう」

 目の前に並べられていたのは、美味しそうなだし巻き卵とお付け物、ほっけの塩焼きにわかめのお味噌汁、ご飯の品数もちょうどいい。
 定番の料理だけど、見た目も良くてシンプルだからこそ、こういう時って一番シンプルな料理って食べたくなるんだよね……。

「紅音、食べようか」

「はい」

 二人で一週間ぶりに食卓を囲むと、嬉しくて仕方ない。

「……いただきます」
 
「どうぞ。 あ、卵焼きと漬物、退院したばかりだから少し味薄めにしてみた」